18.転がり軸受の計算式

1. 軸受寿命

転がり軸受が荷重を受けて長時間運転されたとき,軌道面又は転動体のいずれかに,材料の疲レによって(フレーキングと呼ばれる,ウロコ状の傷が現われ)損傷が起こる。その損傷が起こるまでの総回転数(または一定回転速度での時間)を転がり疲レ寿命(略して寿命)と呼ぶ。

しかし上述の疲レ寿命は,同一材料・加工方法等によっても,大きなパラツキがあるので,定格寿命によって工業的に整理している。

<定格寿命>一群の同じ軸受を同じ条件で個々に運転したとき,そのうちの90%が転がり疲レによる材料の損傷を起こさずに回転できる総回転数(又は一定回転速度での時間)
軸受寿命の計算式 記号説明及び単位
(1)定格寿命(L) (1-1)玉軸受

L=(C/P)3 [106回転]
L=
C:基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重 (動等価荷重)
(1-2)コロ軸受

L=(C/P)10/3 [106回転]
L=
C:基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重(動等価荷重)
(2)定格寿命時間
(Lh)
(2-1)玉軸受

Lh=106/(60*n)*L=106/(60*n)*(C/P)3 [hr]
Lh=
C:基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重(動等価荷重)
n:毎分の回転数[rpm]
(2-2)コロ軸受

Lh=106/(60*n)*L=106/(60*n)*(C/P)10/3 [hr]
Lh=
C: 基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重(動等価荷重)
n:毎分の回転数[rpm]
(3)定格寿命日(Ld) (3-1)玉軸受

Ld=Lh/A=106/(60*n*A)*(C/P)3 [day]
Ld=
C:基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重(動等価荷重)
n:毎分の回転数[rpm]
A:旧稼動時間[day]
(3-2)コロ軸受

Ld=Lh/A=106/(60*n*A)*(C/P)10/3 [day]
Ld=
C:基本動定格荷重[kgf]
P:軸受荷重(動等価荷重)
n:毎分の回転数[rpm]
A:一日稼動時間[Hr]
2. 基本動定格荷重(C)

基本動定格荷重とは,転がり軸受の負荷能力を表わす荷重で,内輪を回転させ,外輪を静止させた条件で,定格寿命が100万 回転(106rev)になるような,方向と大キサの変動のない荷重をいう。スラスト軸受では中心軸上に働くスラスト荷重, ラジアル軸受ではラジアル荷重をとるが,単列アンギュラコンタクト軸受では内外輪の相対的変位がラジアル方向だけになるような 荷重のラジアル分力をとる。

基本動定格荷重(C)の計算法はJIS B 1518 で決定されており,各メーカーのカタログにその数値が記載されている。

この動定格荷重は定格寿命500時間を基準としている。106回転で500時間になる回転速度は33.3r/mnとなる。
3. 動等価荷重(P)

方向と大キサが変動しない荷重で,実際の荷重及び回転の条件のときと同じ寿命を与えるものをいう。ラジアル軸受,ラジア ル軸受ともに,内輪を回転させ外輪を静止させたときの,一定のラジアルまたはスラスト荷重をとる。
引用文献:「技術者必携 機械設計便覧」 (狩野三郎著 改訂版) 軸系及び軸受 軸ガリ軸受 第329、330頁 軸ガリ軸受の設計より引用。